とある会社の暴露問題
タイトルをちょっと禁書目録みたいにしてみました。
さてとあるアニメ会社のスタッフが、社内事情を暴露したということで話題になっているようですね。
その影響あってたいして更新のないブログも地味に注目頂いています。
ともあれ身近な問題のようでソワソワするので、記事にしてみようと思います。
制作資料に関する情報漏洩と違い、雇用形態や賃金などには守秘義務は課せられてないと思うので、やましいことがなければ「暴露」と言うこともないとは思うのです。
が、蓋をあければ「暴露」という表現にふさわしいものでした 笑
アニメーターの多くは多分、業務委託として契約します。
会社を辞めるまでは私もそうでした。
近年は見直しで社員として契約するスタジオも増えているようですが、まだまだ少数派なのではないでしょうか(5~6年程前の私の就活しらべ)。
「業務委託」として仕事をする以上、定時制や職場の限定、ノルマという職務上の制限はできないそうです※。
件の会社のは社会保険も無しに上記のような制限や強制をしているということで、労働時間の長さや低賃金といったいわゆる有名な「アニメーターの過酷さ」に留まらないということのようです。
雇用に関する法律に疎く、社内が皆そんなんでやってきていて、ウチはこうだよ的に言われたら自然に倣うかもしれません。
私自信も、問題になるまで知りませんでした。(※業務委託に関しては法的にもフワフワしているらしく、抜け道的なものもあるのかも知れません。全く詳しくありません。)
これが本当ならば社会的に考えればえらい騒ぎでしょうが、当人の暴露の焦点はここではなく、前述の「アニメーターの過酷さ」にあたる部分に加え、会社からの圧力を訴えているようでしたが。
残念なことですが、会社の考えと合わないことや労働の見合わない低賃金など、この辺りを理由に辞めていくアニメーターは珍しくないというか、よくいるのではと思います。
だからといって、じゃあノルマやめればとか定時に帰ればというのは多分だいぶ乱暴な意見だとも思います。
自殺するくらいなら辞めればいいのにと同じくらい乱暴です。
暴露主もアニメーターになることを決めた時から、ある程度の低賃金や荷重労働は覚悟の上だったのではないでしょうか。
覚悟していた人間が心折れるって、どんな労働環境なんでしょうか。
労働時間や低賃金は、もしかしたら予想の範疇からちょっとはみでて酷かったという現実でも、一緒に働く人間が信頼できるか出来ないかで保たれるメンタルはだいぶ変わります。
笑い合える仲間や上司であれば、「アニメーターナメてましたwいやーキツいっすねwwww」だったとしても、圧力上司やギスギス社内なら「才能ない、人生辞めたい」ってことになることも普通にあります。
ですので、会社の気風が合って何年も働いているスタッフは存在するでしょう。(その人達の感覚が正しいかどうかは分かりません。)
勿論、人間関係ではカバーし切れないような、個人が生きていく上で耐えられる低賃金・荷重労働にも限度はあるとは思います。
古風な会社だと、おまえには期待しているとかいいながら比重の高い仕事を無理な納期でふったりもします。
作画の仕事は動画であれ原画であれ、その仕事の難易度に関係なく一律いくらという単価制です。(例外もあります)
動画の場合1枚いくら、原画の場合1カットいくらという単位で報酬を受け、それは制作費(作品タイトル)によって異なります。
ただ原画の間を繋ぐ動画といえど、難易度はピンキリで、簡単なものは海外に出ることが多いです。
難しい内容のものは一定のクオリティの約束された社内や国内でどうにかすることが多く、優秀な人ほど困難な仕事をさせられます。
完全出来高制なので、困難な仕事を回された結果、多くの仕事をこなすことができず低賃金になります。
他の同期には任せられないような仕事を与えられ、それだけで誇らしく嬉しいという人もいるでしょう。
才能ある人間に難易度の高い仕事を。
そこまでは分かりますが、それに見合った対価がなければ生活できません。
生活できないレベルの賃金や疲労を合わせて天秤にかけた時点で、その会社には合わないということです。
ずっとこうしてきた、これが当たり前という職場は、恐らく辞めていく人間に対して深く考えないのだと思います。
あいつはウチに合わなかっただけ、とかね。
ですが、合う合わない以前に、明るみに出た社会的に問題となる部分ぐらいは、どうか改善してくださいね。
分母は増やしたいが
会社を出てフリーランスで働くようになって2年半がたった。
ほどほどに実力を認めてもらえるようになり、それなりに自分に自信が持てるようになってきた。
取引先の嬉しい評価のせいもあって、当初に比べ、仕事が無い時期に対する焦りがなくなってきた。
仕事がない=収入がない という完全出来高の世界でこの思考はとてもまずい。
将来を視野に入れて収入の半分は貯金しているものの、分母が小さいので大した額にならない。
大した額でない収入で、半分も貯金できているのが田舎のすごいところ。
もともと生活費に対して割りとシビアで(切り詰めているつもりはない)、それなりの楽しい節約生活はしているけど。
とはいえ貯金額が低いことには変わりない。
30万の半分と、10万の半分じゃ全然意味が違ってくる。
ベタだか庭付き&店舗付き一戸建てを買うという目標には遠い道のりだ。
会社をやめた大きな理由は、多趣味でアニメ一本の人生にしたくないということ。
高校・大学と芸術系を志してきたというのもあり、創作全般に興味がある自分が、たまたま縁あって(コネなどではない)選んだアニメの世界だけに留まるのは何か違うと思っていた。
勿論ほかにも大きい理由はあるが、ざっくり言うと他に色々やりたくて辞めた会社。そんな自分が色々やらないなら何で辞めたんだ!ということで、アニメーターとしての仕事口がある程度決まった段階で決意したことがある。
アニメ以外での収入を得ること。
幼い頃の将来の夢はなんでも屋。
なんでもかんでも屋ではなく、好きなものをなんでも屋。
この歳になって子どもの頃の夢を追いかけることになろうとは。
いやいや、世の中若くして企業する人間は大体20後~35歳とどっかで聞いた。若くしてってことは、普通はもっと遅いわけで、早い方がいいかもしれないにしろ、そもそも企業とは全く違うにしろ、全然遅すぎるということはない。
ともかく色々やって、最終的に作画での収入と半々くらいという内訳を目指したい。
分母を増やしたい気持ちも大きいが、自分の場合、手っ取り早く作画浸けの日々を送っていては意味がないということだ。
現在は、ケチが転じて生まれた趣味の手芸と、前々から興味があった画塾講師の仕事で副収入を得ている。
前者は小さな店での委託販売で本当にちまちまとした収入。
それでも世の中にハンドメイドブームの波?があるのか、感触としては悪くない。
後者は定年後の人が集まるカルチャースクール的なやつで、3ヶ月分まとめてそこそこの収入がある。講師以外の手続きやら会場手配やらの面倒は大体スクール側がやってくれる代わりに、当然自分一人でやるよりは割安な講師代。
それでも決まった金額が手に入り、かつ生徒集めなど宣伝は肩代わりしてくれるので、顔の狭い人間でも教室内容によっては人を集められるのがいいところ。
今年一年は作画の仕事をほどほどにして、他のやりたいこととの釣り合いをとりながらバランスを探っていく。
上半期を終えようとしている今、まずまずといったところ。
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1月~6月収入まとめ
作画 458,000(6ヵ月)
創作 52,866(5ヵ月)
講師 90,000(3ヵ月)
計 ¥600,866
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まともな社会人には絶句されるかもしれない。
勿論毎日しっかり働いているアニメーターはもっと稼いでいる(と思う)。
仕事を依頼する側の制作進行さんからしたら、そんな作画に没頭するような人の方が理想的だろうけど。
ここは誰のために、何のために仕事してるのかっていうことを忘れないで、情に流されずにいきたい。
そして注目したいのが講師の割りの良さである。週2回、各2時間の計4時間勤務でこれである。
もちろんそのための準備やらでプライベートを削ることはあるが、それにしてもおいしい。
何より自分が今まで培った技術を無駄にせず誰かに伝えられ、喜ばれるのがとても励みになる。
かといって講師専門になるかと言われればそれはまた別の話。
信念をもって仕事をしなさい
仕事のありがたみを知る
田舎で暮らすフリーランスアニメーターの日々を綴るブログ
原画のお仕事
田舎で暮らすフリーランスアニメーターの日々を綴るブログ
原画のお仕事をさせていただけるようになりました。
動画マン上がりの自分にまさかこんな日が来ようとは。
アニメーターを目指す人間は、まず動画という仕事を経験します。
そこで数ヵ月~数年は動画マンとして働きます。
仕事の出来を見て上司が原画マンへと昇格させるほか、試験制度をとる会社もあります。
原画をさせて貰えるようになってしばらくは、ベテランの原画マンの指導を受け、やがて一人前の原画マンとなります。
私の場合は昇格する前に退社してしまったので、原画としての実務経験ゼロでした。
身近に指導者もなく、原画マンになるのは完全に諦めていました。
ただ、2原※の仕事は動画の延長のようなものと聞いていたので、未経験者でもそれなりにやらせてもらえる気はしてたのですが。
未経験者でも原画マンになれるものなんですね。
地方のアニメスタジオで働いていたせいか、業界のことなんてうちの会社以外に知らず、他のスタジオがどんなやりかたでやってるかとか、社内スタッフとフリーランスの扱いの違いとか、色んな事が目から鱗です。
(※2原・第2原画…原画と動画の間のセクション。他の原画マンが描いたラフを作監修正に合わせて原画にする、清書する仕事。本来は自分が描いたラフを自分で清書するまでが原画の仕事。スケジュールの関係で、原画マンの描いたラフを演出、作監チェック後、本人に仕事を戻せない場合、2原撒きとなる。超ベテラン原画マンはより沢山のカットを担当するために、動きを作って残りは2原撒きにする、ということもある。)
アニメのお仕事
田舎で暮らすフリーランスアニメーターの日々を綴るブログ
会社を退いて1年半。
近頃、知人友人さまざまな方に仕事のことで質問されることが増えてきました。
私のお仕事について、簡単ですが紹介してみたいと思います。
アニメはたくさんの人が携わって完成されます。
キャラクターを描く人、背景を描く人、色を塗る人、3Dを動かす人、撮影する人…
私はそのなかでも、キャラクターなどの「動くもの」を描くアニメーターという役職についています。
現在はデジタルでの作業も浸透していますが、基本は紙に鉛筆の作業です。
朝、荷物が届いて、作画して、送り返す。
とてもアナログな作業が未だに根付いてる業界です。
現在はどのプロダクションもデジタル作業を導入しているでしょうが、それでも急ぎの仕事の場合は紙の方が早いと言われるほどには、アナログ派がまだまだ多いようです。
若手の多い会社などから、徐々にデジタルに移行していくのかもしれません。
案外知られていないのが、同じ絵を描く役職でも背景は別セクションということ。
実際は別のセクションで仕上げられた背景画の上に、私たちアニメーターの描いたキャラクターが重ねて表示され、ひとつの画面が構成されています。
もちろん、遠近、カメラワークに矛盾があってはいけないので、事前にこのようなアングルで描きますよ、というしたがきみたいなものを作ります。このしたがきはアニメーターが作ります。
例えば背景は斜め上から捉えているのに、それに対してキャラクターが下から見上げるように描かれていては、異次元かトリックアートみたいになってしまいます。
ですから、別々のセクションでひとつの画面を作るために、共通のしたがきを作らないといけないのですね。
そのしたがきをもとに、背景の担当者(美術さん)が背景を描き起こし、私たちアニメーターはキャラクターを描きます。
業界ではこのキャラクターをはじめとする動く部分を描く作業を「作画」と呼び、同じ絵を描く仕事でも背景を描く作業とは区別して呼びます。
そして、同じく画面で動くものでも、3Dや撮影効果などもまた区別します。
3Dは作画で描くのが大変な部分を担うことが多かったのですが、技術の進歩によりその範囲を拡大していってます。
作画が線によって紙に描かれる平面的な創作であるのに対して、3Dは立体のモデルなどをつくり、ポーズをとらせるなどして撮影していきます。
作画がパラパラ漫画であるならば、3Dはパソコンのなかで行うクレイアニメ、といった感じでしょうか(あまり詳しくはないです)。
3Dは主に立体感が必要な大型工業製品(車)やメカ、作画の労力を減らすための遠方のモブなどに使われることが多いですが、近年はフル3D(キャラクターも背景もすべて立体)で作られた作品もちらほらでてきました。
また、アニメらしい表現を追及するために、作画で描かれた素材をもとに3Dで再現する手法も見られます。
作画と3D、双方支えあってアニメは進歩しているのかもしれません。
キャラクターに色を塗る作業もまた、別のセクションで行います。
アニメーターが描いた線画をパソコンにとりこみます。アナログで描かれた絵もここからデジタル作業になります。
かつては透明なフィルム(セル)に一枚一枚塗料を塗り、それを重ねるようにして撮影機にかけていました。
現在は日本中のほとんどのアニメはデジタル着色です。サザエさんはどうだったかな?
アナログと比べ格段に効率がよく、作画がデジタル移行にかけている時間とは比べ物にならない早さで浸透したんじゃないでしょうか。
色数も重ねられるセル数も無限に増えますし、カット袋も重くならないし、消耗品もいらない。
アナログでのセルは枚数を重ねると、透明な部分でも画面が暗くなってしまうのだとか?世代でないから詳しくは分かりませんが。
色がマウスのクリックで塗れるようになった代わりに、紙に不要な汚れがある場合のごみ取りや、線画の端が繋がっていないときに繋いだりなど、補助的な仕事も増えています。(区切られた線の中をバケツのように流し込んで色をつけるため、線が途切れていると塗れない)
アニメファンの中ではアニメの見所、花形のように呼ばれる作画というセクションですが、たくさんある行程のなかのほんの一部でしかありません。
エンディングテロップを眺めていると、驚くほど大勢の人々の名前を目にします。
しかも携わった全ての人の名前が載る訳ではなく、会社名などでまとめられている場合もあるので、それを思うと途方もないです。
知らないところで、色んな方々と繋がってひとつのものを作り上げている。
そんな不思議なお仕事です。