アニメのお仕事
田舎で暮らすフリーランスアニメーターの日々を綴るブログ
会社を退いて1年半。
近頃、知人友人さまざまな方に仕事のことで質問されることが増えてきました。
私のお仕事について、簡単ですが紹介してみたいと思います。
アニメはたくさんの人が携わって完成されます。
キャラクターを描く人、背景を描く人、色を塗る人、3Dを動かす人、撮影する人…
私はそのなかでも、キャラクターなどの「動くもの」を描くアニメーターという役職についています。
現在はデジタルでの作業も浸透していますが、基本は紙に鉛筆の作業です。
朝、荷物が届いて、作画して、送り返す。
とてもアナログな作業が未だに根付いてる業界です。
現在はどのプロダクションもデジタル作業を導入しているでしょうが、それでも急ぎの仕事の場合は紙の方が早いと言われるほどには、アナログ派がまだまだ多いようです。
若手の多い会社などから、徐々にデジタルに移行していくのかもしれません。
案外知られていないのが、同じ絵を描く役職でも背景は別セクションということ。
実際は別のセクションで仕上げられた背景画の上に、私たちアニメーターの描いたキャラクターが重ねて表示され、ひとつの画面が構成されています。
もちろん、遠近、カメラワークに矛盾があってはいけないので、事前にこのようなアングルで描きますよ、というしたがきみたいなものを作ります。このしたがきはアニメーターが作ります。
例えば背景は斜め上から捉えているのに、それに対してキャラクターが下から見上げるように描かれていては、異次元かトリックアートみたいになってしまいます。
ですから、別々のセクションでひとつの画面を作るために、共通のしたがきを作らないといけないのですね。
そのしたがきをもとに、背景の担当者(美術さん)が背景を描き起こし、私たちアニメーターはキャラクターを描きます。
業界ではこのキャラクターをはじめとする動く部分を描く作業を「作画」と呼び、同じ絵を描く仕事でも背景を描く作業とは区別して呼びます。
そして、同じく画面で動くものでも、3Dや撮影効果などもまた区別します。
3Dは作画で描くのが大変な部分を担うことが多かったのですが、技術の進歩によりその範囲を拡大していってます。
作画が線によって紙に描かれる平面的な創作であるのに対して、3Dは立体のモデルなどをつくり、ポーズをとらせるなどして撮影していきます。
作画がパラパラ漫画であるならば、3Dはパソコンのなかで行うクレイアニメ、といった感じでしょうか(あまり詳しくはないです)。
3Dは主に立体感が必要な大型工業製品(車)やメカ、作画の労力を減らすための遠方のモブなどに使われることが多いですが、近年はフル3D(キャラクターも背景もすべて立体)で作られた作品もちらほらでてきました。
また、アニメらしい表現を追及するために、作画で描かれた素材をもとに3Dで再現する手法も見られます。
作画と3D、双方支えあってアニメは進歩しているのかもしれません。
キャラクターに色を塗る作業もまた、別のセクションで行います。
アニメーターが描いた線画をパソコンにとりこみます。アナログで描かれた絵もここからデジタル作業になります。
かつては透明なフィルム(セル)に一枚一枚塗料を塗り、それを重ねるようにして撮影機にかけていました。
現在は日本中のほとんどのアニメはデジタル着色です。サザエさんはどうだったかな?
アナログと比べ格段に効率がよく、作画がデジタル移行にかけている時間とは比べ物にならない早さで浸透したんじゃないでしょうか。
色数も重ねられるセル数も無限に増えますし、カット袋も重くならないし、消耗品もいらない。
アナログでのセルは枚数を重ねると、透明な部分でも画面が暗くなってしまうのだとか?世代でないから詳しくは分かりませんが。
色がマウスのクリックで塗れるようになった代わりに、紙に不要な汚れがある場合のごみ取りや、線画の端が繋がっていないときに繋いだりなど、補助的な仕事も増えています。(区切られた線の中をバケツのように流し込んで色をつけるため、線が途切れていると塗れない)
アニメファンの中ではアニメの見所、花形のように呼ばれる作画というセクションですが、たくさんある行程のなかのほんの一部でしかありません。
エンディングテロップを眺めていると、驚くほど大勢の人々の名前を目にします。
しかも携わった全ての人の名前が載る訳ではなく、会社名などでまとめられている場合もあるので、それを思うと途方もないです。
知らないところで、色んな方々と繋がってひとつのものを作り上げている。
そんな不思議なお仕事です。