フリーアニメーター 田舎暮らし 

田舎で暮らすフリーアニメーターの日々を気ままに綴っています。

移住を考える方々が参加するツアーがあったそうです

先日、田舎への移住希望者が参加するツアーがあったそうです。
観光目的でないツアーで、地域の産業や空き家を見て回ったり、まち歩き散策をしたりなど、実際にこの土地で暮らすイメージを掴むことを視野に入れたツアーのようでした。

田舎アニメーターの日々を綴るブログとして、これは題材にしておくべきでしょう。
いち移住者として、(参加したことないし携わってもないけど)移住体験ツアーに対する考えなどをしたためてみました。

 

■ツアー参加の本当の目的は?
移住希望者にとって、移住前に現地を案内して貰えるのはとても良い機会ですね。
住むことを前提とした内容は、通常の観光ツアーではなかなか難しいし、かといって個人では散策くらいしかできない。
で、移住者が欲しい市区町村ではこのようなツアーが増えているようです。


(移住体験ツアーリンク)
http://www.furusatokaiki.net/type/

 

 

移住者体験ツアー、行政が地域おこしや移住推進目的で執り行っていることも珍しくないようで、無料や格安なことが多いのも特徴です。
リーズナブルに一泊二日の旅行ができてしまうので、内容によっては真に移住目的の人ばかりかといえばそうでもないかもしれません。
もちろん、いくら格安でも全く興味がないものに参加しないだろうとは思います。
ですが、移住は選択肢のひとつ、ゆくゆくはそれもいいかも、という人も多少は存在するのではないでしょうか。
そんな人たちにも広く地元を知ってもらいたい!というコンセプトならともかく、真剣に移住を考える人とごっちゃになるとプランが組みにくそう。

加えて、地域の「移住者来て欲しい!」「若い人増えて欲しい!」的な空気もあり、ツアーを楽しい催しで盛りだくさんにしている所もあるかもしれません。
このへんも、参加する客層がブレる要因のひとつな気がします。
なんやかんやで安くて楽しい旅ができるのでラッキー!というような。
反対に、真剣に移住を悩んでたり質問したかったりする層には、ピントのずれた取り組みと感じられてしまうかもしれません。

 

 

過疎地でそれほど沢山のツアーが組めるとも限らないので、宣伝方法によっては移住に真剣な層とそうでない層(ダジャレではない)が入り交じることになりそうです。
本気で移住を考える参加者に対して、必要以上のおもてなし・お客様待遇することは正解ではないでしょうしね。
ツアーという従来のサービス名を使っていても、「お客様をおもてなし」ではなく「訪問者を案内」ではなきでしょうか。

移住希望者には楽しい思い出だけじゃなく、有益な情報を持って帰って欲しいものです。
移住希望者の求めるものを把握し、それに沿った的確な対応を組み込むことが良い結果に繋がるのではないでしょうか。
まぁ取り敢えず成果報告できれば、なんてツアーも勿論あるでしょうが…

 

 

 

■確実な層を集める
形だけのツアーはさておき、本当に移住者を集めたいなら。

移住を真剣に考える人ほどリーズナブルなツアーが嬉しいもの。 頻繁に現地に来られないからこそ、安価で下見できることは強みです。
ならば、現地に来ずとも遠方で確認できるネットでの情報提供の大切さなんてのは、考えたらすぐ分かることですよね。
下見もそうですが、折角の現地民に生の声を聞いたり質問したりできる機会。ツアーに参加する前にあらかたの情報は入手して、疑問点や不安要素を具体化しておきたいものです。
そう、移住希望者にとって最も重要なのは情報です。特に、真剣に移住を考え、且つ移住先の候補地がいくつかあるような人々には。
候補地の一方が情報不足であった場合、冒険家やギャンブラーでない限りもう一方を贔屓するのではないでしょうか。

ぼんやり夢を持ってその事柄を調べたとき、関連情報の入手しやすさで熱意って変わりませんか?

 


例えば、この場合の夢が

○「どこか田舎に移住したい」

だったとします。

[田舎_移住]
[田舎_住みやすい]
などで検索してみると、だいたい色んな都道府県のランキングとか補助一覧とかが出てくる。
限定の土地に惚れ込んでいる訳でなく、単に田舎への移住に憧れる人は、情報のある田舎から選びます。
「どこでもいいから住みやすい田舎に住みたいなー」だった場合は、ここで一段階【移住】が具体的になります。

 


補助やらなんやら調べた末に候補地が絞れてくると、

○「実際住むとこあるのか?」
○「仕事あるのか?」

あたりが気になって検索するかと思います。

[~~市_就職]
[~~市_空き家]※
[~~市_賃貸]
このへんでいくらか情報が出てくれば、はじめのぼんやりとした夢が結構鮮明になってきたりしませんか?
※移住者の多くがマンションでなく一軒家に住みたがってると勝手に想像。

 

 

わざわざ現地に出向かなくても、調べれば移住希望者にとって魅力的な条件が確認できる。
できそう、すめそう、やっていけそう感を掴んでもらうことが大切です。
フットワークの軽い人も沢山いますが、ある程度の情報を得て初めて「現地を見てみたい」と思う層も居るのではないでしょうか。
ツアーはこの次、まずは発信です。

 

 

移住した後の自分の姿を具体的に想像できるかどうかは、ツアー参加や移住の決意を軽くする要素のひとつ。
普段の情報提供を充実させ、具体的に移住を視野に入れている層をキャッチできれば、ツアーでもっと濃密な情報を持ち帰って貰えることでしょうね。
恒常的な現地の情報提供やツアー内容の告知方法によっては、募集段階で参加者の真剣度もある程度コントロールでき、具体的でコアな内容にできるかも、と思いました。(素人案)

 

 

過度なおもてなし(なんとか楽しんでもらおうとする)も、むしろ不要なことが分かります。
こうなるとツアーというより合宿って感じがしっくりくるかもしれませんね。
移住体験合宿。悪くない響きでは?

本気の人はいくつかの移住体験ツアーに参加してみて、比較した末に決断するというのが普通かもしれません。

ツアーで受けた印象がいかに具体的でためになったかが、移住先選定のひとつの基準にも十分なり得るかと思います。
移住希望者の移住目的によって様々でしょうが、

例えば

・子どもをのびのび育てたい人が、現地でかつてない笑顔の我が子を垣間見た、とか。
あるいは

・住民とのコミュニケーションを楽しむ暮らしをしたい人が、現地でおばあちゃんとお話してたのしかった、とか。
・仕事が見つかるか不安なときに、サポートや情報提供の場があることを知る、とか。

 

 

自分がそこで暮らす姿が具体的に想像できること。

 

移住の不安を解消するための質問に対して根拠なく「たぶん大丈夫です」と答えるようなところはどう考えても不安しかないです。
やっていけそう感を削いでしまいます。

 


■移住の目的
上でも触れましたが、一口に田舎暮らしといえど、移住者によって目的も様々かと思います。

 

・都会の喧騒を避けたい
・自然に触れたい
・その土地の産業を職にしたい
・経済的に暮らしたい
・のびのび子育てしたい

 

アニメーター視点から言えば、聖地巡礼などの流行から、

・その土地のファンだから

 

なんてのもあるかもしれませんね。
就職や子育てなんかは行政の支援も少なくないのではないでしょうか。
支援体制に差はあれど、移住者を求めている田舎であれば大抵のところは何かしら支えになってくれそうです。


(移住者支援紹介サイトのリンク)
 https://liginc.co.jp/189325

 

経済的に暮らすには、その地の物価をリサーチしておく必要があるかもしれません。
田舎だから何でも安いということはなく、むしろ衣料品は関西から移住すると大抵の店は高く感じます。
食品だけでも、当然魚が安いのは海側だけだったり、山側では山菜が安かったり。
経済的に暮らすには自炊メニューを柔軟に考えることができ(むしろここが楽しい部分ですが)、好き嫌いはしないことが重要かもしれません(笑)

 

どこにでも流通するようなものは近場で最安値を追い求めず、高い場合はネットで買うなど賢く買い物をしても。
田舎には、チェーン店が立ち並ぶ汚い風景が無い代償に、日曜雑貨品や電化製品は都会より高いことがしばしばです。

人件費も物価に伴って下がると思いますので、普通の社会人が都会から移住先の求人を見てると不安になるかもしれません。
賃貸マンションの相場を現住所と比較してみると、感覚がわかるかもしれません。

 


経済的には何の不安もない!
ただ静かな暮らしをしたい!
という移住希望者もいるでしょう。
特に定年後・老後を穏やかに過ごしたい、年金で趣味に浸る毎日を送りたい、畑とかこだわりカフェとか始めてみたい…


うんうん


…一番大変だと思います。
働き盛りの自分が言っても、なんの信憑性もない言葉かもしれませんが。
身体的にピークを過ぎていることを自覚の上、慣れない土地に暮らすこと、そこで新たな何かを始めることを具体的に想像することが大切かと思います。

天気予報で気温差を確認したり、天候の差をチェックすると良いかもしれません。
体感的なものは実際住んでみないとわかりませんが、覚悟が違うと思います。
雨の多い地域に移り住んで鬱った若い移住者もいます。太陽偉大です。

あと、田舎で静かに暮らすのも案外難しいです。
ニュースが少ない土地ですので、外から人が一人引っ越して来ただけでちょっとした注目の的ですし、田舎の規模によってはもはやニュースです。


喧騒を避ける=人から離れる な場合は田舎はむしろ辛いかもしれません。
都会より人の目が強いというか、意識されている感じ。過干渉を嫌う人は注意です。

移住先が想像とどれだけ違うか、それに自分がどれだけ順応できるかが、田舎暮らしの成功と失敗の分かれ目かもしれません。

 

 

■失敗談・価値観の差
想像と違うもので、個人的に一番ストレスになったのは、「考え方」です。
大きく価値観の異なる人々の中で暮らすことは、気候に慣れるよりもよっぽど辛い部分があります。

 

移住失敗談の中でしばしばネット上でも目にするのが、村八分(とまでいかなくても、住民間でのいざこざ)です。

田舎への移住成功が2~3割程度と言いますが、失敗ケースのどのくらいがこれに該当するのかは分かりません。
これを避けるためにも、現地で移住者が歓迎されているかどうかは、移住前に確認しておきましょう。

行政が斡旋しているからといって、住民が歓迎しているとは限りません。
就職枠の現象などを理由に、ハブられる地域もあるようなので、このあたりは現地に赴いて確認する他、現地に詳しい人を頼るなどしてリサーチしておく必要がありそうです。

 

 

しかし歓迎モードの土地でも普通に起こり得るのが村八分の怖いところ。
現地民と移住者間の価値観の違いによるすれ違い。
お互いの「あたりまえ」に差があることが原因だと感じています。

田舎に暮らす人々と、都会で暮らす人々。
年配の世代と、若い世代。
その他にも違いはあるでしょうが、何気ない態度、対応、言動がストレスに思えることもあります。

以下に、筆者自信が感じた田舎によくある【あたりまえの価値観】を挙げてみます。
(※実体験に基づいていますが、どこの田舎でも皆がこうだという決めつけではありません)

 

 

【田舎的あたりまえ】
☆移住者に対して
・若い人が引っ越して来ただけで嬉しい
・どこから来たの?結婚で?就職で?と、出身地や引っ越し理由をたずねる
・あとは結婚して子ども産んでくれればね(単身の場合)、いい人見つけてね、と移住者本人に言う
・ずっとここにいてくれるよね、と移住者本人に言う

 

 

☆ご近所さんとして
・どこでどんな仕事してるの?と、移住者の仕事、素性をたずねる
・玄関に鍵をかけることに疑問。インターホンを使うことに疑問
・出勤、帰宅時間は把握しておく
・コミュニケーション上のボディータッチ(肩をばしばしなど)
・自分の家の前の掃除のついでに近隣住民の家の前の掃除をする

 

 

☆家庭・組織として
・本家、分家という言葉がたまに出てくる
・なんだかんだ男性が偉い

 

 

☆その他
・基本的に噂が好き
・平気で路上駐車する
・車道を徐行する(歩行者と喋ってたりする)

 


筆者の場合、ほとんどが中高年です。
筆者的に、自分の感覚と違うなと感じた部分です。

特に車のマナーについてはひどいと感じています。
移住を考えている人は、どのくらい受け入れられますか?

 

 

因みに上記のコミュニケーションはほぼ世間話程度のやりとりでおそらく他意はないものと思われます。
結婚とか、あまりに何度も色んな方から言われるので正直ほっとけと思います。
結婚=定住という考えがあってのことだと思います。そうとは限らないんですがね。
また、子どもの姿が見たいというのもあるでしょう。
生涯結婚するつもりがない場合、ある程度年齢を重ねれば口をつぐんでくれるかもしれません。それまで耐えます。

 

 

前述しましたがどこからどこに、どんな人が引っ越して来たかということがちょっとした地域のニュースになります。
特に平和な土地では日頃からニュースに飢えている人たちが多く、しばらくは注目を浴びるでしょう。
もともと移住者の多い地域であれば心配ないかもしれませんが、ひっそり静かに暮らしたい場合は、このへんの覚悟は必要かもしれませんね。

 

 

そして世代差ですが、同年代でも(言い方悪いが)考えが古いこともしばしばです。
県外に出たことの無い人、生まれも育ちもずっとここ!という人は特にそう感じます。
メディアで今日のニュースが確認できる時代でも、感覚まで浸透するにはまだまだ隔たりがあります。
昔ながらの考えが受け継がれていくことは、即ち生活の中に例外が少ないということ。
人口に比例して当然その例外ケースも減り、身近で起こらないことはテレビの中のフィクションと同じ。
晩婚化と言われ続けていても、回りは皆結婚してるし、これが普通、というような。

 

 

どこに住んでも結局は「社会」なので、山を買って人里を離れるような仙人志望者を除いて、ある程度の人付き合いとは向き合う必要がありそうです。

田舎の人情味あるコミュニケーションに惹かれ、移住先で地域と密接に暮らしたい場合でも、場合によっては踏み込む境界などの差に戸惑うことはあるかもしれません。

逆に、何をしてもある程度注目してもらえるので、事業を興したりお店などを構えると皆さん広めて下さるかも。

 


■よかれと思っての事だと把握すること
閉鎖的な田舎でなければ、移住者はだいたい歓迎されていると思います。
人口の少ない土地。代わり映えしない面子の中に見知らぬ人間の姿があることは、初めのうちは警戒対象になることも多いと思います。
ですが、上記のようなコミュニケーションを経るうちにそれも薄らぐと思います。

 

 

知らない人間は警戒する。

様子を見ていろいろ質問してみる。

いい人、悪い人の判断。

 

 

これって、本来は普通のことなんでしょうね。
少数の人々が助け合って暮らしている。
その平和な暮らしを守るセコムを、住民ひとりひとりが行っているだけのこと。
これが今の時代まで続いていることが、その土地の平和の証なのだと思います。

 

 

だって、留守の時間帯を把握するって、筆者なら犯罪のにおいしか感じませんし。

 

 

 

つまり、詮索するのも、根掘り葉掘り聞くのも、結婚結婚言うのも、

 


悪 気 は な い ん で す 。

 


…これが念頭にあるかどうかで、ストレスの重さが変わると思います。
あとは年代や文化の違いかな?男尊女卑とかは。
気に入らない全てを否定して閉鎖してしまうことも出来ますが、その土地で暮らしていく意味の半分くらいは失われると思います。
そういった違いひとつひとつがそこで根付いた文化とも言えるからです。

 

 

■歩み寄りも必要
とはいえ、一方的に相手を知った気になって互いの互いの理解を諦めるのも生き辛いでしょう。
似た者同士だけで寄り添って愚痴り合うのもその場しのぎで解決にはなりません。
コミュニケーションを重ねて、打ち明けられる範囲で辛いことは辛いと告げるのも大切だと思います。

 

 

多くの住民が、移住者を歓迎しています。
ですが、その感覚が分からず、分からないままコミュニケーションをはかってきてくれています。
私の暮らしていたところではこうだった、こういうところに驚いた、こういう行為は驚くから控えてほしい。
たぶん、相手も知りたがっている情報だと思います。
全員に言って回るのもおかしいので、素直に打ち明けられる相手を見つけて下さい。
田舎のことですから、きっと広まります。

 

 

本当に好意的な所だと、移住者の声を聞く会などを開いていたりするようです。
分からないから教えて欲しいと、相手はこうも率直に伝えてくれています。
干渉しない、詮索しないが普通の枠から、片足出すだけできっとだいぶ暮らしやすくなります。

 

 

 

…とはいえ、タイミングも大切です。
好意が去る前にアクションを起こすことを忘れずに。